TOP渋滞緩和生活道路経済効果大気環境周辺道路 | 都心環状線通過交通
海外交通現状計画交通量予測手法データ費用 | EUvs日本 | 地質


参考4-4 EU 対 日本

2013.5.5 掲載

交通政策全体について、
例えばEUと日本ではそれぞれ何を目指そうとしているのか調べてみました。



 

■ EU交通白書2011

 欧州委員会は2011年3月、「欧州単一交通区域に向けてのロードマップ−競争力を持ち、
資源効率的な交通システムに向けて」と題する交通白書を発表しました。
2001年に発表された前回の白書は、持続可能な交通システムのため、道路交通に著しく
偏った手段分担率の改善を求め、鉄道の復活と水上交通の活用を示すものでしたが、
今回さらに発展させ、競争力の確保、温室効果ガス排出削減、石油燃料からの転換を
掲げています。(下記参照)


 

      競争力があり、資源効率的な交通システムへの10の目標

(1) 都市部での旧来型の燃料を使用する車両を2030年までに半減し、2050年の全廃に向けて、順次これを削減
   していく。主要都市の中心地域においては、基本的に二酸化炭素排出のない物流を実現する。

(2) 二酸化炭素排出量の少ない航空燃料比率を2050年までに40%とする。同様にEU内の海上輸送の燃料によ
   る二酸化炭素排出を40%削減(可能であれば50%)削減する。

(3) 300キロを超える道路貨物輸送の30%を2030年までに鉄道もしくは水路などの他の交通モードにシフトさせ、
   2050年までにはこれを50%以上とする。これは、環境に優しい貨物輸送路によって促進される。この目標を
   達成させるため、適切なインフラ整備が必要である。

(4) 2050年までに、欧州高速鉄道網を完成させる。2030年までに、現在の高速鉄道網の延長を3倍にするとともに、
   EUの全加盟国において高密度の鉄道網を維持させる。2050年までには、中距離の旅客輸送の大半は、鉄道
   に移行すべきである。

(5) 2030年までに、EU全体に及ぶ複数の交通モードによる欧州横断交通網の中核ネットワークを整備してその
   機能を完全なものとし、2050年までに質・量ともによりレベルの高いネットワークとするほか、これに対応した
   情報サービスを行う。

(6) 2050年までに、中核ネットワークに位置する空港はすべて鉄道網と接続する。この場合高速鉄道網との
   接続が望ましい。中核となる港湾はすべて鉄道貨物と十分に接続するようにし、また、可能な地域では
   内陸航路との接続を確保する。

(7) 2020年までに近代的な航空管制施設を整備し、欧州単一航空区域を完成する。陸上交通と水上交通に
   ついても同様の施設を構築する。欧州衛星ナビゲーションシステムを整備する。

(8) 2020年までに、欧州の各種交通モードに関する情報、マネジメント、支払いのシステム枠組みを確立する。

(9) 2050年までに、道路交通での事故死者をゼロに近づける。この目標に沿って、EUは、2020年までに路上
   事故を半減させることを目標とする。すべての交通機関の安全とセキュリティの分野においてEUが世界の
   リーダーであることを確実なものとする。

(10) 「利用者負担」と「汚染者負担」の原則の全面的な適用を目指すほか、有益と思われない補助金を含む
   歪みの是正や将来の交通投資のための収入の創出、資金調達の確保について民間部門の参画を促す。



出典:独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
    「高速道路機構海外調査シリーズNo.14 EU交通白書(2011年)」2011.7(PDF



 

■ 日本の交通政策は

 実はこれと同時期、日本においても、移動権の保障、環境にやさしい交通体系の実現、
地域の活力を引き出す交通網の充実を目指す「交通基本法」が検討されたり、道路局・
鉄道局・港湾局・航空局による将来交通需要推計が検討されたりしましたが、ほとんど
立ち消えになりました。
 現在、交通施策の数値目標といえば、「三大都市圏環状道路整備率」「東京圏鉄道に
おける混雑率」「首都圏空港の発着容量」「日本発着コンテナ貨物の釜山港等東アジア
主要港でのトランシップ率」のように交通手段ごとであり、例えば外環について最近は
整備効果を具体的な数値で説明する資料がほとんど出てこなくなりました。
 2011年10月発行のパンフレット『東京外かく環状道路国道事務所』や『外環 関越〜
東名MAP』に掲載されているのは、首都圏の交通の現状を説明しただけのもの、環状
道路について一般的に期待されている効果などです。国交省が2012年7月に開催した
社会資本整備審議会 第14回道路分科会の配布資料では、外環の整備効果として「首都
高都心環状線を利用する交通の約6割が沿道に用のない通過交通」という日本語として
成立していない表現さえ用いられています。
 国交省の道路交通センサスの最新版は2010年で、断面でみる一般交通量調査結果は
公表されていますが、将来交通量の推計に用いられるOD表は何度問い合わせても未だ
に出来ていません。外環事務所の随意契約に「H24外環交通分析検討業務」(契約金額
約2000万円)があり、2013年3月25日に履行期間終了とされていますので、国交省内部で
は出来ているのではないかと2013年4月24日に電話で聞いてみると、報告書は出来上が
っているものの、2010年道路交通センサスベースのOD表がまだ出ていないので推計出来
ていないとのこと。
 そこで、「最近国交省が出す外環の整備効果は一般論のようなものばかりですが、
数値などで具体的に説明できるものはありますか?」と聞くと、「ありません」「考えている
最中です」という答えが返ってきました。
 日本の未来に向けて、今すべきことはないのかと大変な危機感を覚えました。

参考:
国交省交通政策審議会交通体系分科会第25回計画部会「社会資本整備重点計画(案)」2012.7.20



 

書籍『公共事業と市民参加』PI外環沿線協議会PI外環沿線会議

  









Copyright (C) Kitami Ponpoko Kaigi All Rights Reserved.